納得?シャッタースピードと絞り値とISO感度の「関係性」について考えてみた!

先日、シャッタースピードと絞り値とISO感度の関係性について書かれた次の記事がバズっていたので興味深く拝見しました。

f値、シャッタースピード、ISO感度を解説した画像が分かりやすい

記事自体は以下の図(これ自体もかなり前に一度バズったものでしたが)を引用したものです。

Cheatcard
Fotoblog Hamburgより引用

残念ながら上記の記事に付いているはてなブックマークのコメントはネガティブなものが多く、その多くが「この図は『関係性』を示していない」というものでした。確かに、上の図はシャッタースピードと絞り値とISO感度を変えると「写真が」どう変わるかをわかりやすく示してはいますが、それらが「互いに」どう関係しているかという関係性を示してくれてはいません。

また(おそらくこれを受けて)さらに以下の記事が投稿されましたが、これも理論的に正しいとはいえず、はてなブックマークではツッコミを受けているようです。

 カメラの絞りとシャッタースピードの使い方の超簡単な覚え方

そこで本ブログでも、私がこれらの関係性をどう考えているのかを書いてみることにしました。予め断っておきますが、上の記事を読んで勉強になったと言う方もかなりいるはずで、これらの記事の価値を否定するものではありません。 初心者の方のための最初の一歩としては大変わかり易いと思います。この記事はカメラ初心者の方に向けて書いたものではなく、私がどう考えているのかをまとめたものです。わかりにくかったらすみません。

何が問題か

写真をやっている人なら、シャッタースピードと絞り値とISO感度の間にある種の「関係性」があって、撮影の際はこれらのバランスを考えて設定する必要が有ることは感覚的にわかっているのですが、これをうまく説明するのが難しいのが問題なのだと思います。なぜ難しいかというと、これら3つが互いに関係しているということを前提にして説明しようとしているからです。確かに写真の露出を決めるにはこれら3つのパラメータを設定するのですが、これら3つがいわゆる「3すくみ」のように対等な関係であると考えるのはやめたほうがいいと思います。

「3すくみ」ではなく「2つの2項対立」

シャッタースピードと絞り値とISO感度が互いに関係していると考えるのをやめましょう。そして、新たに「画質」というパラメータを加えて4つの関係性を考えることにしましょう。「3つでも複雑なのに4つにするとよりわかりにくくなるのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。「シャッタースピードと絞り値」と「ISO感度と画質」が対立していると考えるだけでいいのです。2項対立が2つならそう複雑ではないですよね?

F SS ISO

シャッタースピードと絞り値の関係性、あるいは露光時間と被写界深度の不確定性

シャッタースピードと絞り値の関係性は、露光時間と被写界深度の不確定性と表現できます。量子力学の不確定性原理からとったアナロジーですが、「(他の条件が一緒であれば)時間軸方向と被写界深度方向の情報をある程度以上同時に正確に表現することはできない」ということです。量子力学と聞いただけで読む気を失いかけた方、ちょっと待ってください。大したことは書いていません。量子力学と聞いただけで腕まくりをした方、ちょっと待って下さい。ちょっとわかりやすくなるかなと思って書いているだけなので、理論的なことは気にせず気楽に読んでください。始めに言っておくと、不確定性というのは要するに両者が並び立たないという意味です。

写真に写っている光景は有限の時間(1/8000秒とか1秒とか30秒とか)の間にセンサーに当たった光を積算したものですから、シャッタースピードを変えることは、その写真に写り込んでいる光景の”時間軸方向の情報の正確さ“を変えていることに対応します。露光時間が短ければ短いほど正確で、長ければ長いほど不正確になります。上に引用した図で言うと、シャッタースピードが遅くなるほど(左から右に行くほど)時間軸方向の情報の正確さが失われ、被写体ブレが生じます。

ShatterSpeed
Fotoblog Hamburgより引用

一方で絞り値は、大きくすればするほど(絞りを絞れば絞るほど)全体にピントが合った状態に近づき、小さくすればするほど(絞りを開ければ開けるほど)被写界深度の浅い、大きくボケた状態に近づきます。これは、”被写界深度方向(奥行方向)の情報の正確さ”が、絞り値によって変わっていることに対応します。被写体によりますが例えばポートレートなどでは背景がボケている方が「良い写真」とされ、被写界深度が浅いほうが「良い」という風潮が有ります。これは、パンフォーカスの写真は安いレンズでも撮れるのに対してボケ量の大きい写真を撮るためにはお値段の高い大口径レンズが必要であるというところから来ているのでしょうが、被写界深度方向の情報の正確さという意味ではもちろん被写界深度が深いパンフォーカスの方が正確であるわけです。上の図で言うと、絞りを開けば開くほど(左から右に行くほど)被写界深度方向の情報の正確さが失われ、ピント面以外がボケていきます。

Aperture
Fotoblog Hamburgより引用

ではこれらは同時にいくらでも正確にできるのかというとそうではなくて、両者を同時に正確にしようとすると、すなわちシャッタースピードを速くして絞りを絞ると、写真の露出は暗くなっていきます。どちらもセンサーに届く光の量を減らす方向に働くから当然ですね。だから、露出を一定に保った上で2つの正確さを同時に向上することはできないのです。片方を正確にしようとしたらもう片方の正確さを諦めなければなりません。走る人を写し止めるためにシャッタースピードを上げたら(時間軸方向の正確さを優先したら)、露出を一定にするためには絞りを開かなければ(被写界深度方向の正確さを捨てなければ)ならないのです。逆もまた然り。これら2つの間にはそういう関係性があります。

ISO感度と画質の関係性

一方、ISO感度というのは画質と相対するものです。ISO感度というのは光の量に大してどれくらい敏感に反応するかというゲインを決めるものです。ISO感度を上げれば上げるほど感度が向上し、少ない光量でも「明るく」写真を撮ることができます。一方、ISO感度を上げると画質はどんどん悪くなっていきます。上の図でISO感度の項を左から右に見ていくとどんどんノイズが乗って画質が低下していっているのが分かりますよね。この2つの関係性はわかりやすいのではないでしょうか。敏感にすればするほど画質は悪くなる。直観的にも受け入れやすいですね。

ISO
Fotoblog Hamburgより引用

ISO感度とシャッタースピード・絞り値の関係性

上述したように、この問題を複雑にしているのは、ISO感度がシャッタースピードや絞り値と対等で並列の関係であるかのように扱うことです。上で提唱したように2つの2項対立に分けて考えましょう。

上述したように、露出を一定に保っている以上、シャッタースピードと絞り値によって決まる露光時間と被写界深度の正確さは互いに拮抗する関係にあります。あちらを立てればこちらが立たず、です。しかし、ISO感度を上げ下げすればこれら2つを変えずにベースとなる露出を変化させることができるのです。思えば上の図のような3すくみ状態で説明がされ始めたのはデジタルカメラが普及してからではないでしょうか?私は使ったことはありませんが、フィルムカメラの時代にはISO感度を1枚毎にころころ変えるなんてことはできなかったはずで、その時にはあまり難しいことはなかったんだと思います。ISO感度を自由に変えられる様になったからこそ、そして高感度化が進んで高ISO感度でもノイズの少ない写真が撮れるようになったからこそ、3すくみ状態で考えたり説明したりされるようになってきたんだと思います。

もう少し補足しておきましょう。シャッタースピードと絞り値をそのままにISO感度を1段上げれば、露出が1段明るくなるので、シャッタースピードと絞り値の不確定性に「ゆとり」ができて、絞り値をそのままにシャッタースピードを1段上げたり、シャッタースピードをそのままに絞り値を1段絞れるようになります。これを、露出の変化の部分をすっ飛ばして説明してしまうと、ISO感度とシャッタースピードが関連しているとかISO感度と絞り値に関係があるかのようになってしまうのです。フィルム時代のように、光量や求められる画質によってISO感度が先に決まって、そのあとシャッタースピードと絞り値で時間と被写界深度をコントロールすると考えるといいと思います。もちろん、今はISOオートがあるし高ISO感度での画質も良くなってきているので2つ目の2項対立関係を気にする必要はあまりなくなってきているのですが、原理としては、ということです。

実践編

その1:花火の場合

では実例を交えながら考えてみましょう。花火を撮影することを考えます。暗いですのである程度ISO感度は上げたいところですが、あまり上げ過ぎるとノイズが目立ちます。特に背景が夜の空になるので、ノイズがひどいと大変気になるところです。そこでまずISO感度を400に設定することにしましょう。ノイズが気にならないISO感度(常用ISO感度)はカメラ及び個人の考えに依存するので、予め調べておくか、撮影結果を見てその場で調整するといいと思います。常用ISO感度については下の記事にも書きました。

【初心者のための写真撮影講座】4. Pモードで露出補正を習得しよう

2015.02.15

ISO感度を決めたら次はシャッタースピードと絞り値です。今回は花火ということで、シャッタースピードを遅くしたいところです。時間方向の正確さを積極的に下げることで、その間の光跡を残しましょう。ということで、マニュアルモードにして、シャッタースピードを2秒に設定します。今回は絞り値はどうでもいい(被写体が遠くにあるので、どんな絞り値でもある程度の被写界深度が得られる)ので、何度か撮ってみながらISO感度400、2秒間で適正露出が得られるようにF値を変えていきます。最終的にF6.3で以下のような写真が撮れました。

IMG_3931.jpg

(注:もちろんレリーズを使えばシャッタースピードを先に決めなくてすみますが、今回は説明用ということでご勘弁ください。例としては星景のほうがよかったかな?)

その2:スポーツ撮影の場合

スポーツ撮影の場合は、選手の動きを写し止めるために時間の正確さを上げてやる必要があります。シャッタースピード優先モードでシャッタースピードを1/400秒に設定します。ISOオートのままで測光を行うとISO感度は400、絞り値はF5.6と算出されました。ここでISO感度があまりにも高すぎて画質への影響が気になるという場合にはISO感度をマニュアルで設定し直す必要がありますが、400で十分と判断、絞り値F5.6もOKだったのでこのまま撮影しました。例えばもうちょっと絞りたいということであれば、ISO感度を400から800に1段上げて、シャッタースピードと絞り値に「ゆとり」をもたせた上で、絞り値を1段絞ることが可能です。

IMG_1982.jpg

その3:風景撮影の場合

風景撮影の場合には、写真全体にピントが合っている方が望ましい場合が多いので、絞り優先モードで絞りを絞って、被写界深度を稼ぐことになります。被写体との距離にもよりますが、まずはF8で試してみました。ISOオートのままで測光を行うと、ISO感度は3200、シャッタースピードは1/100秒と出たとしましょう。例えば本気の作品撮りの場合などは、高画質で撮影したいので、ISO感度を200に下げたいと思うかもしれません。その場合は露出が4段暗くなるので、適正露出を得るためにはシャッタースピードを4倍の1/25秒にする必要があります。1/25秒となると焦点距離によっては手ブレが目立ちますので、確実に撮影を行うには三脚を使用したほうがいいかもしれません。

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まとめ

つらつらと理屈っぽく書いてしまいましたが、要はISO感度をシャッタースピードおよび絞り値と対等で並列なものとして考えると複雑になるから、ISO感度は分けて考えた方がわかりやすいよ、という話でした。あとは自分でいろいろ設定して見ながら得られた写真を見ていれば、感覚として自然と身についてくると思います。それでは、今日もCpature the MOMENT!