わかりにくい被写界深度と絞り値・焦点距離・被写体距離の関係性をグラフにしてみた!

こんにちは!先日は焦点距離と画角の関係を直感的にイメージする方法を考えました。

これは直感的!焦点距離から画角を概算する方法を考えた!

2015.05.28

今回は、被写界深度についてです。ご存知の方も多いとは思いますが、被写界深度というのはピントの合う範囲のことです。一眼レフカメラを買う動機として「背景をぼかしたおしゃれな写真を撮りたい」を挙げる方もいらっしゃいます。大きなボケを得るためには、以下の4つのポイントを抑えようというのはよく言われることですね。

  1. 被写体に近づく
  2. 絞りを開く(絞り値を小さくする)
  3. 焦点距離を長くする
  4. 背景を遠ざける

しかし、実は本当に難しいのは「意図したものにしっかりとピントを合わせくっきりと写す」ことではないでしょうか。背景をボカすことに夢中になりすぎて、肝心の被写体の一部が(意図せず)ボケてしまったことはありませんか?例えば横顔をしっかり写したかったのに奥側の目がボケてしまったり…。

こういうことを避けるためには、どのような条件でどのような被写界深度が得られるかをイメージする必要があります。被写界深度がイメージできれば、その範囲の中に被写体がすっぽり入るような条件を探すのも少しは簡単になるでしょう。

被写界深度の近似式

被写界深度の近似式は以下で与えられます。

Equations

ke!sanより引用(画像は当サイトで作成)

前方被写界深度とは、ピント面から手前側の被写界深度で、これを超えて手前にあるものは前ボケとなります。後方被写界深度とは、ピント面から奥側の被写界深度で、これを超えて後方にあるものは後ボケとなります。

上の2つの式をよく見ると違いは分母のプラスとマイナスだけで、どちらも被写体までの距離(=ピント面までの距離)絞り値焦点距離許容錯乱円径をパラメータとして含みます。つまり、これら4つのパラメータが決まれば前方および後方被写界深度が決まるわけです。このうち最初の3つは上で述べたポイント1-3に対応するので式中に出てくるのは当然ですね。

許容錯乱円径というのは「ピントが合っているとみなせる最大の錯乱円径」のことで、デジタルカメラの場合には画素サイズの値を使うことが多いようです。錯乱円が画素のサイズよりも小さければピントが合っているということですね。それゆえ許容錯乱円径は本来カメラに特有の値です。しかしながら、以下の計算では35mmフィルムでよく使われる値0.033mmを使うことにします。近年はカメラの高画素化にともなって画素サイズが小さくなっているので、許容錯乱円が小さくピントがシビアになっていますが、等倍鑑賞でもしない限り問題にならないことがほとんどです(例えばEOS 5D mark IIIの画素ピッチは0.00625mmで、上の値の約1/5です)。

被写界深度は被写体までの距離によってどのように変化するか

ではまず絞り値をF5.6, 焦点距離を50mmにして被写界深度が被写体までの距離に応じてどのように変化するかを計算してみましょう。下にそのグラフを示します。横軸は被写体距離、すなわちピント面までの距離を表します。縦軸は「ピントが合っているように見える範囲」としました。上のオレンジの曲線はピント面までの距離に後方被写界深度を足したものを、下のオレンジの曲線はピント面までの距離から前方被写界深度を引いたものを表します。黒の直線はx=yで、ピント面の位置を示します。

DOF1

このグラフの見方を、ピント面を5m先に合わせた時を例にとって説明しましょう。下の図を御覧ください。

DOF1 2

横軸の5mのところから上に見ていきます。最初にぶつかるオレンジの線が、被写界深度の手前側の境界です。次にぶつかる黒の直線がピント位置で、最後にぶつかるオレンジの線が被写界深度の奥側の境界に対応します。オレンジの曲線とぶつかったところを左に見ていくと、それぞれ3.7mと7.9mになりますので、この条件(焦点距離50mm, 絞り値F5.6, 被写体距離5m)のとき、ピントが合う範囲は3.7m-7.9mの間であり、被写界深度は4.2mとなります。被写界深度は手前側より奥側に長いということもこのグラフからすぐに分かりますね。ピント面までの距離に応じてピントが合っている範囲がどのように変化するかイメージ出来たでしょうか?

被写界深度は絞り値によってどのように変化するか

それでは、焦点距離を50mmに保ったまま絞り値を変化させた場合を見てみましょう。

DOF2

前の項で例示したF5.6は同じオレンジの線で示しました。これよりF8,F11と絞るとピントが合っているように見える範囲は手前側にも奥側にも伸びていきます。逆にF2.8, F1.4と絞りを開いていくとピントが合っているようにみえる範囲は狭まっていきます。焦点距離50mmでは、F1.4で5m先にピントを合わせたときの被写界深度は0.93m, F2.8では1.9m,  F5.6では4.2m, F8では7.3m, F11のときは15.4mとなります。ものすごーーくラフな計算ですが、この範囲ではF8くらいまでは2段絞ると(F値を2倍にすると)被写界深度はおよそ2倍になると言ってよさそうです(もっと絞るとずれていきます)。テストショットで全体にピントを合わせたい被写体が半分ほどボケてしまった場合、絞りを2段ほど絞ってみるというのはファーストステップとしては良いのではないでしょうか。

被写界深度は焦点距離によってどのように変化するか

では、絞りをF5.6に固定して焦点距離を変えた時にピントが合ってようにみえる範囲がどのように変化するかを見てみましょう。

DOF3

最初に示した焦点距離50mmの時の結果を同じくオレンジで示しています。被写界深度は焦点距離を35mm, 24mmと広角にするにしたがって深く、逆に85mm, 100mmと望遠にするにしたがって浅くなっていきます。これはよく言われるように「広角ほど被写界深度が深く、望遠ほど浅い」ということを反映しています。

試しに5m先にピントを合わせた時の被写界深度を計算してみると、絞り値がF5.6で焦点距離24mmの時には109.1m, 35mmの時には17.5m, 50mmの時は先ほど述べたように4.3m, 85mmの時は1.3m, 100mmの時には0.93mとなります。 ここはさすがにすぐ使える形で近似するのは難しそうです。

あとがき

以上簡単に計算してみましたが、なかなか興味深い結果となりました。ちなみに計算はR言語を使って行いました。

値を入力すれば被写界深度を計算してくれるサイトやアプリは色々有りますが、各パラメータへの依存性がなかなかわからなかったので一度自分で計算してみたかったんですよね。前方被写界深度と後方被写界深度をピント面までの距離に足し引きすることで、イメージしやすいグラフとなったと思うのですがいかがでしょうか。今回は横軸15mまで、縦軸25mまでの近距離条件で計算しましたが、より範囲を広げればパンフォーカスを得るための条件を考えることもできます。