「何枚撮っても大丈夫」な写真管理環境はデジタル写真上達への近道となるはず、という話

こんにちは。皆さんは撮影した写真をどのように管理していますか?AdobeのLightroom、Appleのphotos(旧iPhoto/Aperture)、または各カメラメーカー謹製のソフトを使用している方もいるかもしれません。また、ソフトウェアを用いずにディレクトリで直接管理している方も多いと思います。

今回は、デジタル写真の管理方法のtipsやノウハウを語るのではなく、どんな方法であれそれをきちんと構築することが写真上達のために非常に重要であるということを書いてみようと思います。

ある友人の話

今回の話を考え始めたきっかけは、先日ある知人と話した時にさかのぼります。その知人は以前から写真に興味があって、相談を受けて一緒にカメラを買いに行ったという経緯があるのですが、その後お互いに忙しくなりしばらく会う機会がありませんでした。久しぶりに会って、「写真撮ってますか?」と聞いたところ、「撮ってます。カメラもいつも持ち歩いてます」と言うので嬉しくなって色々話を聞いてみたところ、32GBのSDカードがいっぱいになったので新しいカードを買ったというのです。

嫌な予感がして詳しく掘り下げてみたところ、これまで撮った写真は全てSDカードの中に入ったままになっていて、パソコンに移すことはしていないということでした。ひたすらSDカードに保存して、いっぱいになったら新しいSDカードに差し替えて、古い(いっぱいになった)SDカードはそのまま保管しておいて、見直したくなったらまたカメラに差して見直していると。これは少なくとも次の2つの観点から好ましくありません。

バックアップの観点から

まず第一に、上記の管理方法では写真がSDカードの中にのみ保管されていて、バックアップがとれていません。写真が1箇所にしかないということは、1つの事故で全てが失われてしまうということで、大変危険です。また、その唯一の保管先がSDカードであるというのも頂けません。SDカードやCFカードなどは読み書きの速さや小型化に特化していて、データの長期保存には向いていないからです。

写真を見直すという観点から

次に、写真を見直すという観点からも好ましくありません。カメラの液晶画面は解像度が高くないので、カメラの画面でしか写真を見なおさないと微妙にピントがずれていたりするのに気づきにくいものです。撮影時にはうまく撮れたと思った写真が、実際にパソコンのモニタやプリントで見てみると思ったよりぼやけているという経験をしないと、被写界深度のことを考えてピントを丁寧に合わせ、カメラがブレないようにしっかりとホールドしたまま優しくシャッターを切る、という基本がなかなか身に付かないという恐れがあります。ちなみに、被写界深度のことについては以前書きました。

わかりにくい被写界深度と絞り値・焦点距離・被写体距離の関係性をグラフにしてみた!

2015.06.04

3つのパラダイムシフト

この記事で私が主張したいことは、以下の3つの文に集約されます。

  1. 写真がデジタル化した今、「どんどん撮ってすぐに見直す」ことを繰り返すことが成長への一番の近道である。
  2. しかしながら、撮った写真を管理できる環境が整っていないと、写真を撮ること自体に無自覚な抵抗感が発生する可能性がある。
  3. したがって、写真を安心して取り込んでいける環境を構築することは、機材を購入することや撮影のテクニックを学ぶことと同じくらい、あるいはそれ以上に大切である。
このことがあまり広く受け入れられていないことは、上述の知人の例を挙げるまでもなくわかって頂ける方が多いのではないでしょうか?デジタルカメラを手にしたばかりの頃、こんなふうに考えませんでしたか?「今日だけで◯◯GBも撮ってしまった」「このまま行くとあと◯日でメモリーがいっぱいになっちゃう」「一回の旅行で◯GB
撮っちゃった。このままだとすぐにパソコンのHDDがいっぱいになっちゃうぞ」「前回の写真もまだ整理できていないのに今日またこんなに撮ったら収集がつかなくなっちゃうんじゃないだろうか」…。
これが上述した無自覚な抵抗感です。これをなくすことで写真撮影はもっと楽しくなるし技術も上達していくと思うんです。そしてこの抵抗感を簡単になくすことができるようになった背景には、ここ15年位に起こった以下の3つのパラダイムシフトがあります。

フィルムからデジタルへの移行

私はフィルム時代には写真を撮っていませんでしたが(写ルンですくらいかな)、一度シャッターを切る度にフィルム1枚分のコストが掛かりますし、それを現像するのにも少なからぬコストが掛かります。また、時間の観点からしても、フィルムで撮影してもすぐにプリントできるわけではありませんし、もっと言えばフィルムが24枚や36枚で一巻き分であったために、今日フィルムを使いきらなければ今日撮影した写真は通常すぐにプリント出来ないわけです(撮らずに残っている分を犠牲にしていいのなら別ですが)。

デジタル写真が普及してからはこれが大きく変化しました。カメラと記録メディアさえあれば、ランニングコストを考えずにいくらでも写真が撮れるのです。もちろんシャッターの耐久性があるのでシャッターを切る毎に消耗しているという考え方もありますが、それはフィルムカメラでも同じこと。それよりもフィルムと現像のコストを考えずにどんどん撮れるようになったことは初心者カメラマンにとっては大変喜ばしいことです。しかも、シャッタースピードや絞り値などの情報も全てきちんと正確に残っているのです。フィルム時代には一枚ごとにメモを取っていたと聞くと隔世の感がありますね。

一応断っておきますが、私はフィルムがデジタルより劣っているとは全く思っていません。逆に機会があればフィルムを始めてみたいと思っているくらいです。また、「フィルムでは一枚一枚を丁寧に撮っていて、それが成長につながった。デジタル写真となった今はあまり考えずに写真を撮る人が多くなっていることは嘆かわしい」という主張があることも承知しております。それでも、最初にデジタルカメラを手にしてたくさんの写真をどんどん撮れたことは自分にとっては大切な経験でしたし、以上のようなフィルム写真ならではのメリットがないぶん、デジタル写真ではデジタルならではのメリットを活かして逆に大量の写真を撮っていくべきだと思うのです。

HDDの大容量化と低価格化

2つ目はストレージについてです。以前と比べるとHDDの大容量化と低価格化は恐ろしいスピードで進んでいます。今や2TBの外付けHDDが13,000円程度で購入できるのですから驚きです(この記述も数年後には驚きを持って見られるのでしょう)。

一方で、デジタル写真の高画素化(=1枚あたりのデータ容量)はそれほどのスピードでは進んでいません。どんどん撮っても大丈夫なんです。ちょっとお金はかかりますが外付けHDDを購入すれば撮影した全てを受け止めてくれます。

デジタルデータの取り扱い

最後のパラダイムシフトは、デジタルデータの取り扱いにあります。パソコンが本当に「パーソナル」コンピュータとして各家庭に広く普及したのはここ15年位でしょうか。この頃はファイルはディレクトリ構造に組み込まれる形で管理されていました。ユーザがファイルにアクセスするためには、ディレクトリをたどって(例えばPictures/2015年/6月)のように、そのファイルを探さなければいけませんでした。

しかし、この管理方法には問題が有ります。1つのファイルは原則的には1つのディレクトリに存在するため(ショートカットとかエイリアスのことはちょっと置いておきましょう)、例えば「ペットの写真が欲しい」と言った時に、各ディレクトリを1つずつ見ていって、ペットが写っている写真を探して回らなければ行けなかったのです。その後OSでもファイルタグが標準で付けられたりするようになってファイル管理の考えは進化していきますが、写真管理に抵抗がある人はまだこのような考えかたが強い方が多いのではないでしょうか。「今日撮ったペットの写真は「2015年6月」ディレクトリに入れればいいの?「ペット」フォルダ?それとも両方??」多くの方が経験したように、ディレクトリベースのファイル整理方法はファイル数が多くなるとやがて破綻します。

これに対し、最近は大量のデータをデータベースに登録してアクセスするという考えが主流となってきました。写真のように1つ1つのデータ容量が比較的大きいものに対して、毎回情報を読みに行くのは時間がかかってしょうがありません。そこで、予め必要となる属性(写真の例で言うと撮影したカメラ、レンズ、F値、シャッタースピード、ISO感度など)を1つのデータベースに登録しておいて、検索はそちらで行うのです。こうすることで、いちいちファイルを読み込まなくても迅速かつ簡便に目的ファイルを探し出すことができます

そして、これをユーザーに意識させずに達成しているのが写真管理ソフトなのです。ただSDカードを差し込んで「読み込み」ボタンを押せば、ファイルをHDDに取り込んで、データベース(Lightroomで言うならカタログ)を更新してくれます。HDD内のディレクトリ構造を全く意識することなく、データベースを縦横無尽に検索し、さまざまな属性で絞り込んで一覧することができます。

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何枚撮っても適切に管理できるという確信がデジタル写真の上達を後押しする

以上で述べたように、私達は今大変恵まれた環境にいます。デジタルカメラ、大容量の外付けHDD、そして写真管理専用のソフトウェア。この3つが揃えば後は撮って撮って撮りまくるだけです!写真がいっぱいで管理しきれないということはありません。撮ってすぐにSDカードをパソコンに差し込めば、後はソフトウェアがやってくれます。HDDがいっぱいになったら新しいHDDを買いましょう。大丈夫。2TBあれば、50MBのRAWファイルが42000枚撮れます。毎日100枚とっても1年以上持ちますよ(もちろんバックアップ用に別のHDDは必要ですが)。

写真管理ソフトについてはどれでもいいと思いますが、私は今Lightroomを使っています。カメラメーカー謹製のソフトは現像に関しては純正だけあっていろいろと有利な点も有りますが、管理については少し弱い部分があるのは否めません。いろいろ試してみて、自分が一番安心して写真を任せられるものを選ぶといいと思います。「とりあえず放り込んでおけば、あとで必ず見つけられる」という安心感が一番大切です。

Lightroomで外付けHDDを使う方法については以前書きました。

さらばAperture! 3万枚の写真をLightroom 5に移動することにしたのでまとめ

2015.03.16

撮影した写真の受け皿さえしっかりしていれば、撮ることに対する抵抗感が消失します。どんどん撮ってどんどんHDDに移して、どんどん見直しましょう。なるべく大きなモニタで見て、時にはプリントもしてみましょう。カメラやスマホの小さな画面では気づかなかった粗が目立つようになります。悔しい思いをして、それを次の撮影に活かしてください。これを繰り返すことで、きっと写真は上達するし、もっと楽しくなります。上に書いた3種の神器を手にしていない方は、ぜひやってみてください。言葉にするのは難しいですが、きっと私が書きたかったことがわかってもらえるはずです。それでは、今日もCapture the MOMENT!