【初心者のための写真撮影講座】5. ピント合わせを練習しよう

間が開いてしまいましたが初心者のための写真撮影講座です。これまでの講座はこちらにまとめてあります。

前回は、Pモードで露出補正をするというところまで説明しました。今回はピント合わせの方法について説明します。例えば動物園で檻越しに動物を撮影しようとしたら、檻にピントが合ってしまって肝心の動物がボケてしまっているなんて経験はありませんか?今回の内容をマスターすれば、自分でピントの位置を決められるようになります。

AFのモードについて

今回も引き続きPモードで説明を続けていきましょう。PモードでISO感度をオート設定にしておけば、露出はとりあえずカメラまかせにできます。そっちはカメラに任せておいて、今回はピント合わせに集中しましょう。撮ってみて暗かったり明るかったりしたら露出補正すればよいのです。

カメラが自動でピントを合わせる機能をオートフォーカス(auto focus, AF)と言いますが、AFには基本的に静物(動かない物)撮影の時に使うAFモードと、動体(動くもの)撮影の時に使うAFモードが有ります。静物撮影とはその名の通り置いてあるモノを撮る場合はもちろん、走り回ったりしない人をとるポートレートなどを含みます。動体撮影は飛んでいる鳥や飛行機、車を始め、スポーツなどを指します。キヤノンの場合、前者のAFモードをワンショットAF、後者のAFモードをAIサーボAFと呼びます。要するに、じっくり正確にAFを行う時間があるときに使うのがワンショットAF、距離がめまぐるしく変わる被写体に対して瞬時にAFを行う必要がある時に使うのがAIサーボAFです。なお、各AFモードの他のメーカーでの呼称は以下の記事にまとめたのでご参照ください。

僕らはもっと分かり合える!メーカーごとに異なるカメラ用語の対応表を作成した!

2015.06.06

これらは状況に応じて使い分けるべきものですが、一般的には動くものにピントを合わせるほうが難しいです。そこでまずはワンショットAFで静物撮影の練習を行いましょう。AFのモードをワンショットAF(またはそれに対応するAFモード)に設定してください。EOS Kiss X5の場合は以下のとおりです。

SelectAFmode

(EOS Kiss X5の説明書より転載)

AFフレームの設定について

次に、AFを行うエリアを設定しなければいけません。これは、ファインダー内(またはライブビュー画面内)のどの位置でピントを合わせるかを設定することに他なりません。AFポイント(測距点とも呼ばれます)の数はカメラによって異なりますし、AFポイントの使い方も異なります。例えば単一のAFポイントを使ってピンポイントでAFを行うモード(1点AFなどと呼ばれます)、隣接する複数のAFポイントを使って広いエリアで被写体を捉えるモード(領域拡大AF、ゾーンAFなどと呼ばれます)、さらに使用するAFポイントを自動的に決定するモード(自動選択AFモードなどと呼ばれます)などを選択できるカメラも有ります。

中央1点でのフォーカスロックを極めよう

AFの基本

AFの基本は「中央1点」です。ゾーンAFではなく、使用するAFポイントを1点だけにすることで、撮影者の意図を明確にして撮影することができます。複数のAFポイントで被写体を捉えるゾーンAFモードでは、基本的にゾーン内の一番近いものにAFが合ってしまうので、意図せず被写体の手前にあるものにAFがあってしまう場合があるのです。全自動モードで柵の向こうの動物にピントを合わせようとした時に柵にピントがあってしまうのは、ゾーンAFで最も近くにある被写体(柵)を被写体として捉えてしまっているからです。1点AFで柵の合間を縫って動物を捉えれば、柵にピントを奪われることなく望み通りのAFが可能となります。

また、同じ1点AFでも、使用するAFポイントは中央のAFポイントが一番良いです。その理由は一番精度が高いからです。特にエントリーモデルなどでその傾向が強いです。したがって、AFモードは「1点AF」、AFポイントは「中央」に固定してしまいましょう。

AFを中央1点に固定してしまうと、ファインダーの中央にしか被写体を持ってくることができないのではないか、真ん中に被写体を持ってくるのは「日の丸構図」といってあまり良くないと聞いたぞ、という声が聞こえて来そうですが、そんなことはありません(日の丸構図も悪くないよという話は今回は置いておきましょう)。フォーカスロックというテクニックを使えば、中央1点にしたままピントを合わせた被写体をファインダーの任意の位置に持ってくることができます。今回のメイントピックは、このフォーカスロックを極めるという点にあります。

フォーカスロックのやり方

フォーカスロックのやり方は簡単です。

  1. ピントを合わせたい場所(ポートレートなら被写体の瞳など)をファインダーの中央のAFポイントに持ってくる
  2. そのままシャッターボタンを半押ししてAFを行います
  3. シャッターボタンを半押ししたままでカメラを振り、被写体を好きな位置に置いて構図を決め、シャッターボタンを全押しする

以上です。1.でピントが合う(「合焦する」とも言います)と、カメラの設定に寄ってはピッという電子音がなったり、ファインダー内でAFポイントが光ったり、ファインダー内の合焦サインが点灯したりしてカメラが「合焦出来ました」と伝えてきます。その合図があるまではじっとシャッターボタン半押しの状態をキープしてください。

もちろんダイヤルやスティックを使えばファインダーを覗きながらAFポイントを動かすこともできますが、構図によってファインダー内のピント位置は異なってくるので、撮影する度にAFポイントを動かさなければならず、テンポが悪くなります。中央1点を用いたフォーカスロックを利用すれば、シャッターボタンだけを使って1,2,3の3テンポで素早く測距できるので、テンポを乱すことなく軽快な撮影が可能となります。

プロのカメラマンに撮影されるということはあまりないですが、結婚式を挙げた際には前撮りなどを含めて何人かのプロの方に写真を撮っていただきました。撮影の瞬間には毎回フラッシュが光るのですが、カメラマンの方が一度こちらにレンズを向けたのにフラッシュが光らず、そのままカメラを横に振るので「撮らないのかな?」と油断しているとフラッシュが光って写真を撮られるということが何度も有りました。その時はまだ写真を始めていなかったのでわからなかったのですが、これがまさにフォーカスロックで撮影していたのですね。今思えば、ツーショットなのに妻の方でばかり測距していましたね。まあ、当然といえば当然ですか…。1点のみで測距するので、構図内で最も大切な、ピントを合わせたいところで測距する必要があるのです。

ちなみに、親指AFという設定を使うとシャッターボタンの半押しをキープしなくて良くなるので楽なのですが、それについては初心者編を書き終えたら別の記事として書くことにします。

コサイン誤差について

中央1点で測距する場合には、コサイン誤差と呼ばれる誤差を考える必要があります。下の図をご覧ください。

CosineError

 

上の図左側のように、被写体の左目を中央のAFポイントに合わせて測距したとします。その後右側のようにカメラを降って構図を整えると、左目がピント面から少しだけずれてしまうのがわかって頂けるでしょうか?この誤差をコサイン誤差と言います。このことを知っていれば、測距後にカメラを振る角度が小さいほどコサイン誤差が小さくなることがわかります。例えば上の例の場合では右目で測距すれば、コサイン誤差を最小にできます。とはいえ、口径望遠レンズで絞り開放にした時など極端に被写界深度が浅い時以外は、あまり気にする必要は無いでしょう。被写界深度の見積もり方については以下の記事をご参照ください。

わかりにくい被写界深度と絞り値・焦点距離・被写体距離の関係性をグラフにしてみた!

2015.06.04
R0000609.jpg

 

それでもピントが合わなければ

ピントが合わない(シャッターボタンを半押ししても合焦しない)場合

  1. カメラの設定がMFになっている
  2. レンズのAF/MF切り替えスイッチがMFになっている
  3. 被写体のコントラストが低く合焦ができない
  4. 暗い
  5. 被写体が最短撮影距離よりも近くにある

他にもあるかもしれませんが、よく起こるのはこんな感じです。1と2は、カメラやレンズの設定の問題です。特に2は、何かの拍子にレンズのAF/MF切り替えスイッチがMF側にスライドしてしまうことがあるのでときどき起こります。

3と4については、カメラのAFは被写体のコントラストを検出して行われている、わかりやすく言えば縦や横の線がぼやけないような位置を探しているために、AFポイント上を走る線が不明瞭だとAFができません。3は例えば真っ白でつるつるな壁を撮ろうとしてもAFが効かない場合で、このような場合はMFを使うか、距離が近い別のものを使って測距する必要があります。4はそもそも暗くて被写体がよく見えない場合で、このような場合はフラッシュのAF補助光を使うか、MFをつかうしかないでしょう。

5は非常によく起こります。撮影に夢中になってレンズの最短撮影距離よりも近くに近づいてしまうと、AFが効きません。この場合はそもそもその距離でピントを合わせた写真を撮ることができないので、被写体との距離を開けるしかありません。

合焦したはずなのに撮影した写真を拡大してみるとピントが合ってないように感じられる場合

  1. カメラのホールドが悪く、シャッターボタンを押した際にカメラがブレている
  2. 被写体が動くことに寄ってぶれたように見える「被写体ブレ」が起きている
  3. コサイン誤差が大きく、被写体が被写界深度の外に出てしまっている
  4. レンズのフォーカスシフトが大きい
  5. レンズとカメラのピント調整が必要

同じく他にもあるかもしれませんが、このような可能性を考える必要があります。1についてはそもそもカメラのホールドが悪く、シャッターボタンを押す際の動きでカメラがブレてしまっている場合です。脇を締めてしっかりカメラをホールドする、タイマーを使ってレリーズと撮影のタイミングをずらすなどの工夫のほか、シャッタースピードを速くしてブレを抑えることもできます。シャッタースピードの変更の仕方については、以降の講座で書いていきたいと思います。三脚を使うのもひとつの手でしょう。

2もよくあるのですが、被写体が微妙に動いているためにぶれているように見える場合です。赤ちゃんなどを撮っていると、止まっているように見えても意外と動いていることが分かります。そういう場合もシャッタースピードを速くするか、または連写して動いていない瞬間を後で選ぶとよいでしょう。

3については、被写界深度を深くするために絞り値を大きくする、中央以外のAFポイントを使う、MFを使うなどの対策が考えられます。絞り値を大きくするやり方については次の講座で書く予定です。被写界深度は浅いままにしたい場合は中央以外のAFポイントを使うと、測距後にカメラを振る角度を小さくできるのでコサイン誤差を小さくできます。ただし、上でも書いたように中央以外のAFポイントは(カメラによりますが)精度が低い場合があるので注意してください。

4については、一部のレンズで見られる現象です。AFはレンズの絞りを開放にした状態で行うのですが、撮影時には設定した絞り値に応じて絞りが閉じます(今はPモードなので撮影者が明示的に設定するわけではないですが)。つまり、絞り開放で撮る時以外は、AFをする時と実際に撮影するときでレンズの絞りの設定が異なるわけです。フォーカスシフトとは、この絞り値の違いによってピント面がずれる現象を差します。これはレンズの設計の問題なのである意味では仕様です。フォーカスシフトが大きいレンズは、レンズ名+フォーカスシフトで検索すると山のようにレビューが出てきますのですぐに分かります。対策は…あまりできないのですが、AF後にMFで微調整したり、癖を覚えておいて実際にピントを合わせたいところより少し後ろや前で測距することくらいですかね。

5については、カメラとレンズのどちらか、または両方のAF機構にズレが生じていて、カメラはちゃんと合焦できたと判断しているのに実は合っていない場合です。カメラ側でAFの調整を行うことができる機種もありますし、シグマの最新レンズなどはUSBドックを利用してレンズ側の調整をおこなう事もできるのですが、以上の可能性を考えてもまだずれるという場合にはメーカーに調整を依頼することを考えてもいいかもしれません。調整が必要な状態か否かを判断するポイントは、同じ焦点距離、絞り値で撮った時にいつも前ピン(ピント面が前にずれること)になる、後ピン(後ろにずれること)になることです。

まとめ

いかがでしたか?中央1点のAFポイントを利用したフォーカスロックを極めれば、ピント合わせに関しての基本は身についたと言えると思います。それでもピントが合わない場合には、以上に上げたような可能性を考えながら再挑戦してみてください。原因と対策を考えて試行錯誤するうちに技術はさらに向上するでしょう。また、そのためには必ず大きな画面で拡大して写真を見てみてください。カメラの液晶で見ているだけでは微妙なピントのズレにはなかなか気づけませんよ。

次回は、これも基本となる絞り値優先モードの使い方について書きたいと思います。それでは、今日もCapture the MOMENT!

(追記)

続きを書きました。

【初心者のための写真撮影講座】6. 絞り値優先モードを使って被写界深度をコントロールしよう

2015.07.29

(追記ここまで)