【初心者のための写真撮影講座】6. 絞り値優先モードを使って被写界深度をコントロールしよう

初心者のための写真撮影講座第6弾です。かなり長くなってきたので記事のまとめページを作りました。過去の記事はこちらからたどって下さい。上のメニューにもリンクを張っておきました。

さて、これまではPモードでの露出補正、ピント合わせについて書いてきたわけですが、できるようになりましたでしょうか?これらのテクニックが身につけば、好きなところにピントを合わせて、構図を決めて、明るさ(露出)が気に入らなければ補正して…と、一通りのことができるわけです。いわば、カメラを上下左右に振って好きな構図の写真を撮ることができます。これだけでも十分です。実際、私も大好きなカメラマンの一人である梅佳代さんは、ほとんどの写真をPモードで撮影されるそうです。

しかし、Pモード(でISO感度オートの場合)は露出、すなわち絞り値、シャッタースピード、ISO感度の組み合わせは完全にカメラまかせにしてしまうため、どこにレンズを向けて風景をどのように切り取るかを決めることはできても、例えば被写界深度、すなわち奥行方向のコントロールを明確に行うことは難しいのです。今回は、絞り値優先モード(Avモード)を利用して、自分の好きな絞り値を指定することで、被写界深度をコントロールしようというお話です。

絞り値優先モードとは

まず最初に、絞り値優先モードとは何かを説明させていただきます。以下では露出と絞り値、シャッタースピード、ISO感度の関係性を理解して頂いていることが前提となります。これに関しては、以下の記事で書いたので自信のない方は復習してみてください。

【初心者のための写真撮影講座】4. Pモードで露出補正を習得しよう

2015.02.15

納得?シャッタースピードと絞り値とISO感度の「関係性」について考えてみた!

2015.05.01

では、下の図をご覧ください。ISO感度をオートにしたPモードでは、適正露出となる絞り値、シャッタースピード、ISO感度の組み合わせは灰色の平面上のどれでもいいわけで、その内のどれが選択されるかはシャッターボタンを半押しして測光してみるまで分かりません(もちろんカメラごとにアルゴリズムがあるのでランダムというわけではありませんが)。これに対してAvモード(Aモード)では、使用する絞り値をユーザが指定することで、残る変数をシャッタースピードとISO感度だけにしてしまうのです。下の図で言うと、右側の図の黒の直線部分となります。

 

AvMode1

もちろんまだシャッタースピードとISO感度という2つの変数が残っていますので自分で全てを決めているわけではないのですが、1つの変数を自分で明示的に指定することで、撮影される写真に自分の意図を反映させることができ、それでいて全部自分で決めるほど煩雑ではないわけです。ちなみに上の場合、シャッタースピードとISO感度の組み合わせはカメラが決めてくれますが、もちろんISOオートを解除してISO感度を自分で固定すればシャッタースピードが自動的に決まりますし、カメラによってはシャッタースピードとISO感度の範囲を事前に決めておくこともできます。

絞り値優先モードでの撮影の方法

では実際に絞り値優先モードで撮影をしてみましょう。といっても、大したことはありません。Pモードにした時と同じように、モードダイヤルを回してAvモード(またはAモード)に合わせてください。その後、ダイヤルを回して絞り値を決定し、Pモードで練習した時と同じようにピントを合わせて撮影するだけです。

NewImage

(キヤノンEOS Kiss X5の説明書より引用)

撮ってみた写真が暗かったり明るかったりしたら、Pモードの時と同じように露出補正を行ってください。絞り値は設定した値のままで、ISO感度とシャッタースピードの組み合わせが変化していきます。

R0000650.jpg

絞り値を選択する

さてこれだけで絞り値を固定して撮影ができるようになったわけですが、肝心の絞り値はどのように選択すればよいのでしょうか?ここでは、絞り値の選び方について説明します。

主目的は被写界深度(ボケ量)のコントロールと考えよう

最大の目的はやはり被写界深度(ボケ量)のコントロールとなります。すでに説明したとおり、絞り値は大きければ大きいほど被写界深度が深く(ボケ量が小さく)なり、小さければ小さいほど被写界深度が浅く(ボケ量が大きく)なります。絞り値と被写界深度の関係については以下の記事が参考になるかもしれません。

わかりにくい被写界深度と絞り値・焦点距離・被写体距離の関係性をグラフにしてみた!

2015.06.04

また、考え方としては、「絞るほど光が少なくなる結果露光時間が長くなり時間の不確定性が大きくなるが、その代わりに被写界深度は深くなって被写界深度方向の不確定性は小さくなる」ということです。これについては以下の記事で書きました。

納得?シャッタースピードと絞り値とISO感度の「関係性」について考えてみた!

2015.05.01

写真を撮るときは、例えば風景写真や集合写真、記念写真のように背景までしっかり写したいというときと、例えばポートレートやマクロ写真のように背景をぼかして撮りたいという時がありますよね。こんな時はAvモードの出番です。背景をしっかり写したいときには絞り値を大きくして、背景をぼかしたいときには絞り値を小さくして撮影しましょう。

また、暗い部屋で子供がケーキのロウソクを吹き消すシーンなど、光量が圧倒的に不足している時には、できるだけ絞りを開いて光を取り込みたいですよね。こういう時もAvモードにして絞りを開放に固定してしまうとよいでしょう(もちろんフラッシュを使う方法もありますがそれについてはまた別のエントリーにします)。

このように、Avモードで絞り値を指定してやることで、シーンに応じた被写界深度の選択や、パラメータの優先順位(上の例だと「背景がボケてしまってもいいからとにかく光を取り込みたい」「ISO感度が上がって多少ノイズが増えても被写界深度を稼ぎたい」)を明示化することができるわけです。

絞り値を変えると被写界深度の他に何が影響を受けるか

シャッタースピードとISO感度

Avモードでは絞り値を固定して、適正露出となるようにシャッタースピードとISO感度の組み合わせをカメラに決めてもらいます。絞り値を変更すると、当然のことながらシャッタースピードとISO感度が連動して変化します。絞り値を大きくする(絞りを絞る)ほど、単位時間当たりにセンサーに届く光の量が少なくなりますので、それを補うためにシャッタースピードは長く、ISO感度は高くなります。すなわち、動いているものはぶれやすく、画質は低くなる傾向になります。逆に絞り値を小さくする(絞りを開く)ほど、単位時間当たりにセンサーに届く光の量が大きくなりますので、シャッタースピードは短く、ISO感度は低くなります。すなわち、動いているものは写し止められ、画質は高くなっていくわけです。何度も言いますがシャッタースピードとISO感度のバランス、すなわち上図の右側のグラフで黒の直線上のどの点が選ばれるか、はカメラのアルゴリズム次第です。とはいえ、ISO感度の上限を指定したり、シャッタースピードの範囲を指定したりすることで、シャッタースピードとISO感度のバランスをある程度コントロールすることは可能になります。例えば、ISO感度が3200位上になるとノイズが許容できない量になってしまうというのであれば、ISO感度の上限を3200に設定しておくことで、ISO感度を上げすぎずにシャッタースピードを遅くするようにできます。

画質

ISO感度が変わることによる画質の変化については上ですでに述べましたが、これはセンサーで光を感受する際に乗るノイズの量の話です。一方で、絞り値を変化させることによってレンズの光学的性質が変化することによっても画質は変化します。これは、現実のレンズが理想的なレンズでは無いために、さまざまな収差が残存しており、絞りを絞ることによって一部の収差が改善することによります。収差と絞りの関係については以下のエントリーで書きました。

収差ってなんだ?写真への影響をまとめてみた!

2014.11.03

まず基本中の基本として、絞り開放ではレンズの光学的な画質は最高ではなく、絞りを絞るほどさまざまな収差が解消して光学的な画質が改善するということを覚えましょう。ただしこれには限界があって、絞りすぎると逆に回折と呼ばれる現象によって画質が低下するようになります。従って、光学的画質は求められる被写界深度と相談して決める必要があるわけです。

まずは4段階くらいで使いわけよう

さて、色々と書きましたが、実際にAvモードで絞り値を変化させてみると、様々な数値を選ぶことができて困ってしまうと思います。しかし、実際に撮り比べてみるとわかると思いますが、隣り合う2つの絞り値(例えば開放F1.8のレンズのF5.6とF6.3)で比べてみてもそれほど大きな差があるわけではないのです。慣れるまでは、以下の4つ(場合によっては3つ)のどれかを選ぶと良いと思います。たくさん撮っていくと感覚が身についてくるので、あまり悩まずにまずは適当に使ってみてください。以上で述べた基本の考え方が身についていれば、撮影した結果を見ればすぐに対処法がわかると思います。

とりあえずの絞り開放

スタイルにもよりますが、とりあえず絞り開放をデフォルト設定にして撮ってみるのはよい作戦だと思います。私も基本的には開放で撮ることが多いです。上で述べたように絞りを開放することでシャッタースピードは速く、ISO感度は低くできるので、被写体が動くことによる被写体ブレを防ぎつつ、ノイズを抑えることができます。また、いわゆるボケ量の大きい、ポートレート的、または印象的な写真が撮れるようになります。

注意点としては、絞り開放での各種収差が大きいレンズがあるということです。このあたりのことはレンズごとのレビューなどを検索してみると山ほど出てきますが、レンズキットでボディに付いてきたズームレンズは無理のない設計になっているものが多いので開放でも問題ないでしょう。撮ってみて大きく拡大して見てみて変だと思わなければとりあえず大丈夫です。アラが気になってきたらよりよいレンズへのステップアップの時期が来たということです。

絞り開放を避けるべきシチュエーションとしては、記念写真や集合写真のように背景までしっかりと写したい場合や、晴天下時の日中屋外のように光が強すぎて、開放ではシャッタースピードを最速、ISO感度を最低にしても光量が多すぎて白飛びしてしまうような場合が上げられます。このようなときは絞り開放を避けて少し絞るか、NDフィルターというフィルターをレンズに取り付けて減光するのがよいでしょう。フィルター類については別のエントリーで書くことにします。

開放から1-2段絞って最高画質

一般的には、絞り開放から1-2段ほど絞ったところがレンズの光学的性能のピークであることが多いです。これもレンズのレビューを見てみるとわかるのでご自分のレンズの画質のピークがどの絞り値で得られるのかをチェックしておくと良いと思います。1-2段絞るというのは、絞り値を1.4倍(1段)または2倍(2段)にするということです。開放絞り値がF2.8のレンズを使っているのであればF4-F5.6程度、F4のズームレンズであればF5.6-F8程度です。

レンズの性能を最高に引き出す絞り値を選択すれば、画面の隅々まで高い解像度が得やすくなりますが、被写界深度はまだ比較的浅いままであるシーンが多いので、場合によってはもっと絞る必要があるかもしれません。また、やはり暗い場面ではシャッタースピードが遅くなったりISO感度が上がってしまったりするので開放で撮る必要が生じる場面にも出会うでしょう。1−2段絞れば確かにレンズの性能は最大になるのですが、手ブレしたりノイズが乗ったりしてしまっては元も子もありません。

バランスの良いF5.6

開放絞り値の大きいズームレンズでは、前項で述べた開放から1−2段絞りというのがF5.6よりも大きくなってしまうかもしれません。上で「場合によっては3つ」と述べたのはこのためです。しかし、もし開放絞りの小さい単焦点レンズなどを使っているのであれば、F5.6というのは日中の屋外でスナップ的に撮るときには最もバランスの良い絞り値かも知れません。ある程度絞ってレンズの光学的画質を高めつつ、被写界深度が稼げますのでピント面が多少ずれても被写体を被写界深度内に収めることができるわけです。旅行先などでとっさの場面に対応する必要があるような時にはデフォルト設定としておいてもいいかもしれません。もちろん暗くなってきたらもう少し開いたほうがいいのは言うまでもありませんが。

パンフォーカスのF11

焦点距離や被写体までの距離によって異なるので一概には言えないのですが、多くの場合においてF11まで絞ればパンフォーカス(ファインダー内の全てが被写界深度内に収まること)が得られます。また、多くのレンズにおいて回折現象が目立ち始めるのもF11より絞った場合がほとんどです。そこで、例えば山の風景写真などを撮るときに手前からおくまでピントが合った写真を得たいときにはF11を選ぶといいでしょう。F11で撮ってみて不満ならF16を選べばよいでしょう。

注意点としては、F11まで絞ると当然シャッタースピードが遅くなるので、手ブレしやすくなることが挙げられます。風景を撮る方々が三脚を利用しているのはそういうことなのです。しっかりした三脚に載せれば、シャッタースピードが長くなることによる手ブレを気にせずに絞ってパンフォーカスを得ることができます。

まとめ

さていかがでしたでしょうか?露出が絞り値、シャッタースピード、ISO感度で決まるということを理解し、Pモードで露出補正とピント合わせさえ練習してあれば、Avモードが一番使いやすいと思います。Avモードで絞り開放を「基本の構え」として、場面に応じて絞り値を変えて撮りましょう。

とはいえ、場面によってはシャッタースピードを固定したいときもあります。例えばスポーツの撮影などがそれです。次回はTvモードを使ってこれを達成する方法を説明したいと思います。

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